To shareholders

株主・投資家の皆様へ

代表取締役 社長執行役員CEO 藤田恭嗣

電子書籍取次事業から、"Publishing Platformer"へ。
電子書籍流通を支え、市場の拡大を牽引する存在へ転換していくとともに、新たな領域へのチャレンジも行ってまいります。


株主の皆様には、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

第20期となる今期、当社グループは中間決算において投資有価証券評価損を計上し、そのため通期連結業績予想についても最終赤字となる見込みです。株主の皆様には、ご迷惑やご心配をおかけいたしておりますことを深くお詫び申し上げます。中間決算においては海賊版サイト被害から回復し、売上高、経常利益としては過去最高となりました。通期業績予想に対する進捗率も中間時点で50%を超え、本業が好調である一方で、過去の投資による損失を計上したことは誠に遺憾ではございますが、投資方針や投資基準を見直すとともに、子会社や投資先の事業成長や価値増大を実現するべく、人材を増強し管理体制の強化に着手しております。

また、当社グループでは2017年3月に子会社化した出版デジタル機構とのシナジー創出に向けた取り組みが本格的にスタートしました。千代田区竹橋のパレスサイドビルの本社オフィスを増床し、出版デジタル機構も同オフィスに入居することで、まずは組織としての融合を推進。今後は基幹システムの統合・開発による国内取次業務を一本化しメディアドゥテック徳島への業務移管による効率化を図ってまいります。

期初には経営体制を刷新し、各業務領域におけるグループ横断的な統括責任者を明確にしました。
これにより、経営の意思決定の速度が速まったと同時に、グループ各社の結束力が高まり、中期経営計画の目標に向かって一致団結して進んでいく体制が整いました。


海賊版サイトによる被害からの回復

さらなる成長に向けた基盤構築が進む一方で、第20期は苦難と直面しながらのスタートとなりました。前期後半から猛威を振るっていた海賊版サイト※1 は、サイト閉鎖・無効化に向けた有効な手立てが見つからないまま、出版業界に与える被害は深刻化していました。

政府は2018年4月13日に知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議を開き、甚大な被害をもたらす3つのサイトに対して、プロバイダーによるサイトブロッキングを要請。また、この動きに端を発し、広告業界では、悪質な海賊版サイトへの広告出稿や広告配信サービス提供の停止を各事業者に要求する等の対策が行われました。特に悪質だった海賊版サイトがアクセス不能となったことで、結果的にサイトブロッキングが実施されることはありませんでしたが、その後、現在までに国内で大きな被害をもたらす海賊版サイトは確認されておらず、「サイトを閉鎖してもまた新たなサイトが出現し、いたちごっこになるのでは」という懸念も払しょくされつつあります。

当社グループとしても若年層が主に利用する電子書店において売上成長鈍化の傾向が見られましたが、海賊版サイトによって著作権を守る重要性が認識された結果、電子コミックスの利用者の裾野を広げることに繋がったとも考えられ、4月以降回復基調に戻り、電子書店各社の広告費増強の効果も相まって、6月以降は想定以上に売上が伸長しております。

当社グループは、著作権者等の権利を著しく損なう海賊版サイトの根絶に向けて関係者との協議を重ね、対策を検討するとともに、今後の法制度整備ならびに著作権教育の推進においても著作権者および出版社と協調してまいります。

また、当社グループは海賊版サイトの対策として、新たなサービス展開も検討しています。7月に子会社化を発表したJコミックテラスが手掛ける「マンガ図書館Z」は、ビューア上に広告を付けてWebやアプリ上で作品を無料で公開することで、広告収入を作者に還元するサービスです。今後は出版社と連携して適法なコンテンツを読者が気軽に楽しめるプラットフォームを展開し、海賊版サイトに対抗していきたいと考えております。


中期経営計画発表

当社グループは7月の今期第1四半期決算発表に合わせて、初めての中期経営計画を発表いたしました。

このなかで、当社グループは中期経営方針として「電子書籍取次事業から“Publishing Platformer”への転換」を打ち出しました。これまでは電子書籍取次事業がグループ全体の業績拡大を牽引しており、今後も電子書籍市場拡大の恩恵を受けることが見込まれますが、株主の皆様のご期待以上の成長を遂げるためには、電子書籍取次事業以外の領域へのチャレンジが必要となります。

中期経営計画を策定するにあたって、当社グループが持つ最大の「強み」は、電子書籍流通における圧倒的なポジションだと考えました。昨年3月に出版デジタル機構を子会社化したことで流通総額は700億円を超え、電子書籍取次では国内最大手となりました。

さらに4大出版社(KADOKAWA、講談社、集英社、小学館※2 )に株主として参画いただき、すべての出版社と取引可能な独自のポジションを有しています。

このポジションと当社グループが持つテクノロジーを組み合わせることによって、Publishing Platformer、すなわち、電子書籍流通全体を支える存在への転換を図ります。中期経営計画資料では既存事業の強化やAI、ブロックチェーンを活用した新規事業への取り組み方針について記載しておりますので、ぜひご覧ください。


中間業績ハイライト

2018年度における電子書籍市場規模は、海賊版サイトの影響を受けた前年度からの回復が見込まれることから309億円増加(14%増)の2,550億円と予想されております。また電子雑誌市場は325億円、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は2,875億円となる見込みです。また、このまま順調に推移すると、2022年度の電子出版市場は、3,495億円(電子書籍市場3,150億円、電子雑誌市場345億円)※3 にまで拡大するものと予想されております。

このような市場背景の中、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」を当社グループのビジョンに掲げ、著作物の健全なる創造サイクルを実現するとともに、より豊かな社会づくりに貢献するための事業推進や業容の拡大に取り組んでまいりました。

当事業年度中間期においては、海賊版サイトからの回復状況が想定を上回ったことで、売上高23,218百万円(前年同期比30.3%増)、経常利益534百万円(前年同期比32.1%増)となりました。※4 一方で、2016年に資本業務提携を結んだCreatubbles社について、当初策定した計画に対して遅れが生じたことから、投資有価証券評価損を計上しました。また、2017年に資本業務提携を結んだインターネット総合研究所※5 がアジア企業として初めてイスラエルのテルアビブ証券取引所へ株式上場いたしました。イスラエルで株式公開する場合、公開時の時価総額や浮動株比率に日本市場とは異なるルールがあり、想定よりも低い時価総額での上場となったことから投資有価証券評価損を計上しましたが、今後マーケットメイカーと連携し、流動性が向上すれば株価上昇を期待できるものと考えております。


今後の取り組み

2017年の、紙と電子を合算したコミックス(単行本)の市場規模は3,377億円で、うち電子コミックスは1,711億円、紙のコミックスが1,666億円となり、初めて電子コミックスが紙のコミックスの売上を上回りました。※3 また、今後はコミックスだけでなく、文字もの(小説や教養書など)の書籍市場が立ち上がっていくことが期待されています。特に注目すべき動向は、電子化することによって市場が拡大している点です。これまで電子書籍は紙の本と置き換わることによって市場が伸長してきましたが、電子書籍はいつでもどこでも購入することができるため、一人当たりの利用額が紙よりも増える傾向にあります。こうした流れを受け、出版社が今後電子書籍に注力することで、電子書籍市場は拡大を続けると見込んでおります。

当社グループとしましても、一層の市場拡大に貢献するべく、電子書籍流通におけるインフラ整備に注力しております。また一方で、新たな市場を開拓するべく、株式会社メディアドゥホールディングスに新サービス推進室、株式会社メディアドゥにコンテンツマーケティング本部を設置し、新技術を活用したプロダクトや、BtoCの新たなサービス展開の検討をスタートしています。

今回策定した中期経営計画は、既存の電子書籍取次事業を主軸に置きつつ、当社グループが国内出版業界を活性化し、電子書籍市場を一層拡大させる推進役を担うための新たな分野への進出を表明する野心的なものとなっています。今後はこの目標の実現に向けて邁進してまいりますので、株主の皆様には引き続きご支援賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

株式会社メディアドゥホールディングス
代表取締役 社長執行役員CEO
代表取締役 社長執行役員CEO 藤田恭嗣


  • ※1:著作権を侵害し、無料でマンガなどの作品を公開している違法サイト
  • ※2:50音順/敬称略
  • ※3:出所:「電子書籍ビジネス調査報告書2018」インプレス総合研究所
  • ※4:2018年2月期は出版デジタル機構を4月から連結対象としたため、今期は3月分の売上高が増加している影響を含む
  • ※5:インターネット総合研究所の株式を100%保有するイスラエル法人 Internet Research Institute Ltdの株式を保有