To shareholders

株主・投資家の皆様へ

代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣

売上高500億円突破。
中期経営計画に基づき、更なる飛躍を目指す。


株主の皆様には、平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

第20期となる2019年2月期において、当社は投資有価証券評価損等の特別損失を計上し、通期連結業績において最終赤字となりました。株主の皆様には、ご迷惑やご心配をおかけいたしておりますことを深くお詫び申し上げます。

2018年7月に発表した業績予想に対して、第20期の実績は売上高+12%、経常利益+59%の上振れとなり、業績は好調に推移した一方で、過去の投資先の不調やシステム開発による損失を計上したことは誠に遺憾ではございますが、投資方針や投資基準を見直したほか、子会社や投資先の事業成長を実現するべく、人材を増強し管理体制を強化したことで、現在は有効なPMI※1のノウハウが社内に蓄積しつつあります。事実、当社にとって最大規模のM&A案件であった株式会社出版デジタル機構をはじめ、買収した子会社や出資先のなかには当初の計画以上に業績が好調に推移している企業も存在いたします。今後も当社の事業成長に向けて有効な選択肢であると考えられる買収案件については十分な検討を重ねたうえで、推進してまいります。


海賊版サイト閉鎖後、電子書籍市場は大きく成長

さて、当社にとって第20期は、海賊版サイトによる被害から出版業界が息を吹き返したことで売上高が大きく増加し、再成長を遂げた期となりました。深刻な被害をもたらしていた大手海賊版サイトが2018年4月に閉鎖したことにより、各電子書店の売上が回復したことに加え、スマートフォンなど電子デバイス保有者の増加、コンテンツ提供形式の多様化、電子書店や出版社によるキャンペーンやプロモーションの拡大、ユーザーの電子書籍利用定着によって、一層の市場拡大が実現しました。その後、国内で目立った海賊版サイトは確認されておらず、「また新たなサイトが出現するのでは」という懸念は払しょくされつつあります。

当社は将来においても海賊版サイトによる著作権侵害を防ぎ、これらのサイトを根絶するべく、新たな対策検討を行うことにいたしました。具体的には、慶應義塾大学SFC研究所、株式会社KADOKAWA、株式会社講談社、株式会社集英社、株式会社小学館と共同で設立したAdvanced Publishing Laboratory(APL)を媒介として、民間の大手通信事業者との協議の場である「マンガのインターネット流通環境整備に関する勉強会」を設置。今後は出版社、通信事業者との意見交換を通じて、海賊版サイトへの対策を検討するとともに、法制度整備ならびに著作権教育の推進においても協調してまいります。


中期経営計画を発表

2018年7月には当社として初となる中期経営計画を発表いたしました。

中期経営計画を策定するにあたって、当社が持つ最大の「強み」は、電子書籍流通における圧倒的なポジションだと考えました。2019年2月期の当社流通総額は950億円となり、電子書籍流通において実に37%のシェアを有しております。※2当社が取引する電子書店数は150店以上存在し、なかでもユーザー利用上位20書店※3の全てと取引があることから、大手電子書店によるプロモーション強化の流れに伴って、このシェアは急速に高まりを見せています。

さらに4大出版社(KADOKAWA、講談社、集英社、小学館 ※50音順)に当社株主として参画いただいているほか、出版社との取引口座は1,700を数え、全ての主要出版社と取引可能な独自のポジションを有しています。非マンガ出版社だけでも1,260社となり、これは他の業界プレーヤーには到底真似のできない水準です。

このポジションと当社グループが持つテクノロジーを組み合わせることによって、当社は今後、“Publishing Platformer”、すなわち電子書籍流通全体を支える存在への転換を図るために、当社が担うべき役割を、「①LEGACYを作る」と、「②LEGACYを創りに行く」の2つに分けました。

まず「①LEGACYを作る」とは、電子書籍市場の拡大を支えるべく、出版社や電子書店と連携したプロモーションの実施や、効率的な運用体制によって流通カロリーの削減を行うことを指します。当社はすでに出版営業、書店営業、運用管理において300名以上の体制を構築しており、キャンペーン管理数は年間1万件、取扱稼働コンテンツ数は60万件を超えました。今後は一層の体制強化と効率化を図り、オペレーショナル・エクセレンスを実現してまいります。

次に「②LEGACYを創りに行く」とは、現在想定されている紙から電子への切り替えに伴う電子書籍市場の拡大だけでなく、先端技術を活用した新たな流通プラットフォームを構築し、新市場を創造することを意味します。当社のポジションを活用すれば、既存の電子書籍では到達しえない、コンテンツの価値とユーザーの地位を高める未来を実現することができると確信しており、こちらについては具体的な発表を近々行いたいと考えておりますのでご期待ください。


メディアドゥと出版デジタル機構を統合

前述の「①LEGACYを作る」において重要となるのが、組織の効率化と強化です。これを実現するには、当社連結子会社の電子書籍取次2社である株式会社メディアドゥと株式会社出版デジタル機構の統合が必要不可欠でありました。

2017年3月の出版デジタル機構子会社化以降、メディアドゥと出版デジタル機構は業務連携による効率化や事業拡大等について協議を重ね、2018年3月には千代田区竹橋のパレスサイドビルの本社オフィスを増床し所在地を統合、各制度や組織の統合を進めてまいりました。

このたび最大の課題であった新電子書籍取次システムの開発や移管に目処が立ったことから、取次事業統合の総仕上げとして、2019年3月1日を効力発生日としメディアドゥと出版デジタル機構の両社を合併することといたしました。※4

新たな電子書籍取次システムは、従来の電子マンガの巻配信だけでなく、話単位での配信など多様な提供形式に対応しているほか、データ処理能力や拡張性が大幅に向上しており、市場拡大に欠かせないシステムとなっています。今後はシステム統合により国内取次業務を一本化することで業界全体の大幅な効率化による市場成長の促進と利益の最大化を目指すとともに、株式会社メディアドゥテック徳島に株式会社メディアドゥの制作業務を整理・移管し、高付加価値業務は東京で、業務の場所を選ばないものは徳島で行うことで、私の故郷である徳島県における雇用創出に貢献してまいります。

また、新たに設立した子会社、株式会社出版デジタル機構については、インターネット技術の世界的標準化推進団体である、World Wide Web Consortium(W3C)を通じた電子書籍の国際標準規格制定に日本を代表して関与する事業を担うとともに、日本出版インフラセンター(JPO)が推進する紙と電子の出版情報データベース構築への協力など、電子出版市場の拡大に貢献する業界横断的な事業を手掛ける予定です。


更なる成長に向けた布石

更なる飛躍に向けたM&Aは、第20期においては3件実施いたしました。

株式会社Jコミックテラスはマンガ図書館Zという無料の読み放題サービスを手掛けています。こちらは広告モデルによる新たな電子マンガの配信プラットフォームとして期待しており、今後は出版社との連携を通じて事業拡大を目指します。

株式会社徳島データサービスはデータ入力を主力とする企業です。規制強化によって官公庁向けのデータ入力業務に対応できる既存事業者の減少が見込まれる一方、徳島データサービスの実績やノウハウとメディアドゥグループの信用や規模を活用することで、空白となったデータ入力市場に容易に参入することができると見込まれ、新たな事業の一つとしての成長が期待できます。さらに、今後発生すると見込まれる膨大な書誌データの入力作業が発生することから、徳島データサービスを活用することで入力業務を効率化することができ、より一層のデジタルコンテンツ創出に貢献できます。

MyAnimeList, LLC.は、2005年に誕生した日本のアニメ・マンガ情報がユーザー同士によって登録・更新されていく世界最大級のコミュニティサイト「MyAnimeList」を手掛けています。開設以来、20万件を超えるアニメ・マンガ等に関する情報や口コミ、ランキング等が掲載され、海外のファンにとって重要な情報の入手経路となっています。現在の月間利用者数は1,000万人、月間ページビュー数は1億5,000万PVを超え、英語圏を中心とした200ヵ国以上のユーザーから支持される規模にまで成長を遂げています。


今後の取り組みについて

今日、企業が中長期的な成長を目指すためには、ESG、すなわち環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの視点が重要であるという考えが広まってきています。当社にこれをあてはめると、環境面では、電子書籍の利用促進が紙使用削減や物流コスト削減といった環境負荷抑制に直結しますし、社会面では、本との接点を増やすことが読書時間増加を促すことにつながります。ガバナンス面では、経営の透明性を高め、ダイバーシティを意識した経営を行うべく、社外取締役構成比(6人中2名の33%)や女性管理職比率(IT企業平均11.6%を超える14.2%)といった指標を意識してまいりました。2019年4月には、社員一人ひとりのコーポレート・ガバナンスへの意識を高めるべく、当社ならびにメディアドゥの社員等に対して私の保有株式を無償譲渡いたしました。対象企業における社員株主数は96%に達しており、出版業界をテクノロジーで牽引する自覚、東証一部上場企業社員としての法令順守、株主目線での高い利益成長への意欲を高める効果を期待しております。

当社グループは、上場した2013年度から順調に事業を拡大し、第20期は売上高505億円(前期比+36%)、経常利益14.9億円(前期比+80%)に達しました。これもひとえに、株主の皆様のご支援の賜物と心より感謝申し上げます。

今後はこの目標の実現に向けた戦略的な取り組みを実施してまいりますので、株主の皆様には引き続きご支援賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


通期のハイライト

第20期において、当社グループの主力事業領域である電子書籍市場は、大手海賊版サイトが2018年4月に閉鎖したことにより、影響を受けていた取引先の売上が回復したことに加え、スマートフォンなど電子デバイス保有者の増加、コンテンツ提供形式の多様化、電子書店や出版社によるキャンペーンやプロモーションの拡大、ユーザーの電子書籍利用定着によって、一層の市場拡大が実現しました。

今後も紙の本から電子書籍への転換、ユーザーの認知度向上や電子書籍の利便性向上に伴い、電子書籍市場は拡大が継続することが見込まれております。2017年度における電子書籍市場規模は2,241億円となり、前年度の1,976億円から265億円増加いたしました。また、電子雑誌市場は315億円、電子書籍と電子雑誌を合わせた電子出版市場は2,556億円と推計されております。国内電子書籍市場は今後も拡大が見込まれ、2022年度の電子書籍市場は2017年度の1.4倍となる3,150億円、電子雑誌市場345億円を合わせた電子出版市場は3,495億円になると予想されております。※5

このような事業環境において、当社グループは著作物を公正利用のもと、できるだけ広く頒布し著作者に収益を還元するという「著作物の健全なる創造サイクルの実現」をミッションに、「ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人へ」をビジョンに掲げ、日本における文化の発展、および豊かな社会づくりに貢献するため、積極的な業容の拡大に取り組んでまいりました。

また、既存事業の強化に加え、株式会社メディアドゥと株式会社出版デジタル機構との事業連携を加速させるため、新電子書籍取次システムの開発、組織の再編成を実行し、業務の効率化および更なる事業成長に向けた事業基盤整備を進めてまいりました。また、様々な電子書籍配信ソリューションの強化、流通ネットワークの拡大を推進するため、M&Aや資本提携も積極的に行いました。現在、当社は2019年2月末時点で子会社10社と関連会社3社を抱えております。

主力事業である電子書籍流通事業における売上高は49,912,530千円(前期比37.8%増)、セグメント利益は1,525,129千円(前期比66.7%増)となりました。

なお、中期経営計画では数値目標として2021年2月期に売上高630億円、EBITDA35億円、2023年2月期に売上高800億円、EBITDA60億円を掲げております。しかしながら、2019年2月期の業績が大きく上振れたことから、これらの数値目標については2020年2月期中に見直しを行いたいと考えております。

一方で、当連結会計年度においては特別損失を計上いたしました。

当社連結子会社である株式会社メディアドゥと株式会社出版デジタル機構の2社において開発を進めておりました新電子書籍取次システムについて、構築したシステムや機能の利用範囲について精査したところ、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づいて484,289千円の減損損失を計上いたしました。

また、子会社や投資先の業績状況に鑑みて資産価値の見直しを行った結果、投資有価証券評価損1,216,974千円、貸倒引当金繰入額337,034千円、のれん償却額260,433千円の特別損失を計上いたしました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は50,568,147千円(前期比35.9%増)、経常利益は1,492,490千円(前期比79.6%増)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,243,255千円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益358,370千円)となりました。

貸借対照表につきましては、当連結会計年度における有利子負債残高は100億円、現預金残高は77億円、有利子負債から現預金を差し引いたネット有利子負債は23億円となりました。2020年2月期の連結EBITDAは24億円を予定しており、2020年2月末にはネット有利子負債は解消する見込みです。今後は利益を積み上げることで純資産を増やし、財務健全性を高めてまいります。

株式会社メディアドゥホールディングス
代表取締役社長 CEO
代表取締役社長 CEO 藤田恭嗣


  • ※1:Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)。経営統合に伴って、計画したシナジー効果を獲得するためのプロセス統合とマネジメント
  • ※2:当社流通総額950億円は当社計算に基づく2019年2月期の数値。電子書籍市場規模はインプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2018」に基づき、2018年度予想を2,550億円として試算。なお、同様の試算に基づくと2018年2月期は32%
  • ※3:インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2018」における「半年以内に購入したことのある電子書籍ストア Top20」より
  • ※4:2019年3月1日付で株式会社出版デジタル機構を存続会社、株式会社メディアドゥを消滅会社とする吸収合併を実施。同日付をもって、合併後の出版デジタル機構は名称を株式会社メディアドゥに変更するとともに、100%子会社として新たに株式会社出版デジタル機構を設立
  • ※5:出所:インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2018」より